ホットハッチというコンセプトが完全に失われてしまうまでに、この本来は慎ましい姿をしたハッチバックベースの俊足モデルの価格はどこまで高騰するのだろう?
最近ではルノーが7万2000ポンド(1040万円)以上というプライスタグをかかげて登場した、カーボン製ホイールを履いた究極のハードコアモデル、メガーヌRSでこの命題に挑もうとしている。
ホットハッチとしてはまさに驚異的な価格だ。
これほどの金額で実用性を無視したモデルを手に入れたいと思うのであれば、ほとんどが新車のポルシェ718ケイマンGT4や、ほとんど使用歴のないロータス・エキシージ・スポーツ410を選ぶだろうことを考えれば、やり過ぎだと言わざるを得ない。
さらに、こうしたモデルであれば周囲のひとびともそれほど困惑せずに済むのだ。
だが、いままさにメルセデスAMGが新たな挑戦者として名乗りを上げようとしている。
それがこのA 45 Sであり、5万570ポンド(730万円)というプライスタグ(オプションを満載した今回の車両価格は5万6570ポンド/817万円だ)を掲げたこのクルマはいま、われわれお気に入りの大きく波打つ荒れた路面のB級路を舞台に追撃を受けている。
このクルマは十分な速さを備えているのだろうか?どんな場面でもという訳ではないが、スーパーカーを打ち負かすだけの能力は備えている。
ではこのクルマは高価だろうか?確かに。
それでも1985年にランチア・デルタS4ストラダーレを手に入れたいと思えば、当時の価格で5万5000ポンド、いまの価値なら16万7000ポンド(2411万円)を支払う必要があったのだから、メガーヌRSトロフィーRのことを常軌を逸しているなどとは言えないだろう。
だが、こうしたデルタやメガーヌとは違い、A 45 Sは奥深きAMGのラインアップでは決してトップに君臨しているモデルというわけではない。
デルタと同じようなボディスタイルを持つこの新型メルセデスにもホモロゲーションの香りを感じるかも知れないが、例えそうだとしても、先代モデルがBTCCに参戦して以来、Aクラスにモータスポーツの実績はなく、レースとは無縁の存在だ。
フォルクスワーゲン・ゴルフRといったモデルのライバルとして登場した3万8000ポンド(549万円)のプライスタグをかかげたA35と比べると、A 45 Sは別のカテゴリーのクルマだと言える。
巨大なウイングと拡大されたトレッド、艶やかで力強いボディに取り付けられた各種ブラケット、そして、ホットハッチ史上最強というべき世界基準のパワートレイン。
さらに、このクルマにはカナードまで装着され、82mmという驚くべき口径の4本出しのマフラーが、オプションのリアウイングとのバランスを取っている。
そして、最高時速315km/hをうたう日産GT-Rにもウイングは装着されている。
ロードテストエディターのマット・ソーンダースは、A 45の購入を考えるひとびとに、悩ましい課題を突き付けるべく、GT-Rとの対決を企画したのだ。
2007年にR35世代のGT-Rが登場した時、日産はバカバカしいほど慎ましやかな価格設定を行うという、忘れがたい大きなミスを犯している。
5万6000ポンドというその価格は、同じようなパフォーマンスや血統を持つライバルたちを何光年も置き去りにするほど安価なものであり、このバーゲンプライスによって、日産が誇るこのゴジラはその偉大なジャイアントキラーとしての名声をさらに高めることとなった。
そして自らの過ちに気付いた日産は、以降徐々にGT-Rの価格を引き上げている。
いまや新車のサーキット向けモデル、ニスモバージョンであればその価格は17万5000ポンド(2527万円)にも達しているのだ。
だが、ほぼ使用歴の無いフェイスリフト後の個体を、新車のA 45 Sとほぼ同じくらいの価格で手に入れることが可能であり、だからこそ今回の対決を思い付いたのだ。
ジャイアントキラーとして、心からハッチバックを欲しいと思うのだろうか? それとも、こんな比較をすること自体間違っているのだろうか?
多くのひとびとがGT-Rの古さを気にするだろう。
最近地元警察がパトカーに採用したこのクルマは、栃木県にある日産の工場で創り出されており、現行GT-Rの設計年次の古さはそのインテリアを見れば一目瞭然だろう。
ランエボの末裔!
一方で、こうした歳月もGT-Rの路上におけるプレゼンスをいささかも弱めてはおらず、パフォーマンスの面でこのクルマに勝るモデルを考え出すのは未だに難しい。
2017年モデルのGT-Rは、その3.8LツインターボV6エンジンから570psのパワーと65.0kg-mのトルクを発揮しており、ボルグワーナー製ツインクラッチ6速ギアボックスと日産のATTESA E-TSを介して路面へと伝達される。
2本の長いプロペラシャフトを持つこのシステムは、明らかにリア偏重のセッティングだが、必要に応じて50対50のトルク配分が可能であり、いくつかの地域においては依然としてジェット燃料を使用したマシンを除く最速の地位を保っている。
よりソフトなサスペンションと遮音性を手に入れた最近のGT-Rはより「GT」に近いモデルと言えるかも知れないが、盛大なロードノイズを発するダンロップ製タイヤを履いていた今回の個体は、依然としてダイレクトな生々しい感触を伝えて来る。
そして、その感触はより新しいメルセデスAMG C63 Sのオーナーたちをも嫉妬させるかも知れないほどだ。
それでも、この個体を販売している世界的に有名なGT-Rのスペシャリスト、リッチフィールドではダンロップ製タイヤをミシュランが誇るパイロットスポーツ4Sに交換することが多いと言う。
一方の明るいサンイエローに塗られたこの小さなA 45 Sは、その強力なエネルギーによって、まさに4つのタイヤを履いた核融合とでも言える存在だ。
コンパクトなボディにわずか2Lの排気量から422psを発揮するハンドビルドのAMG製クローズドデッキエンジンを積んで、四輪駆動システムを備えたこのクルマは、かつての三菱ランサー・エボリューションの末裔とも言うべき存在だ。
互角の速さ!
だが、このクルマの四輪駆動システムはフルタイムでもなければ、そのギアボックスはマニュアルでもない。
その代わりに積むのが8速デュアルクラッチオートマティックであり、左右どちらにも必要に応じて伝達可能なトルク(つまり、エンジンが発揮しているトルクの最大50%だ)を流すことの出来るふたつのクラッチをリアアクスルに備えている。
さらに、エンジンは横置きであり、排気ポートとツインスクロールターボがドライバー側に、吸気がフロント側に配置されている。
その結果、レスポンスの向上に繋がる吸気パイプの短縮化に成功しており、さらにパワーで劣るA35が積む量産型M260エンジンで見られたような反応の遅れはこのクルマには存在しない。
ソーンダースの言葉を借りれば、公道における2地点間の移動において、このAMG製ホットハッチがGT-Rと互角の驚くべき速さを持っていることは明らかだ。
例えGT-Rの大柄で均整のとれたボディや、完全にドライな路面状況といったものが違いをもたらしたとしても、それはほんの僅かなものでしかない。
そして、この2台の違いを理解するのに、それほどのスピードも必要無いのだ。
何よりも驚かされたのは、A 45 Sの最大の武器が、その職人技を感じさせる力強いエンジンではないということであり、これほどの強烈なパワープラントと、妥協なく締め上げられたシャシーの組み合わせは、とても日常生活をともにすることなど出来ないだろうと思っていた。
驚異的なレベル!だが、そうではなかった。
このクルマのボディコントロールと高速でのしなやかさは驚異的なレベルに達しており、さらに比較的ソフトな低速での乗り心地は、先代A45では味わうことが出来なかったものだ。
GT-Rのボディサイズが路面との一体感を損なうような場面でも、A45は次に何が起こるかを手に取るように伝えてくるのであり、それはもはやこれ以上は必要ないと言うほどだった。
そして、それはどんなコーナーでも、どんなスピードでも変わらない。
ターンインしている時でさえ、このクルマのドライバーはディフェレンシャルが見事にトルクを配分している様子を感じることが出来る。
どっしりとしたリアが旋回を始めても、A45 Sが求めるのは完全にニュートラルなハンドリングであり、リアをわずかにスライドさせながら前進を続けるのだ。
決して大げさなほどのオーバーステアは感じさせないが、アンダーステアなわけでもない。
ドアが2枚増えているにもかかわらず、200kgほど軽量なこのクルマは敏捷性でGT-Rを上回っている。
速度感応型ステアリングは一定した反応を返してはくれず、荒れた路面ではやや過敏な様子を見せるものの、AMGらしい重みと感触を備えている。
対照的にGT-Rは多くの点で恐怖を感じさせ、まずは、このクルマのゴツゴツとしたフィールと、穏やかなターボエンジンのサウンド、さらにはデリケートながらも急激な加速を見せるアクセルレスポンスといったものに慣れる必要がある。
最近ではルノーが7万2000ポンド(1040万円)以上というプライスタグをかかげて登場した、カーボン製ホイールを履いた究極のハードコアモデル、メガーヌRSでこの命題に挑もうとしている。
ホットハッチとしてはまさに驚異的な価格だ。
これほどの金額で実用性を無視したモデルを手に入れたいと思うのであれば、ほとんどが新車のポルシェ718ケイマンGT4や、ほとんど使用歴のないロータス・エキシージ・スポーツ410を選ぶだろうことを考えれば、やり過ぎだと言わざるを得ない。
さらに、こうしたモデルであれば周囲のひとびともそれほど困惑せずに済むのだ。
だが、いままさにメルセデスAMGが新たな挑戦者として名乗りを上げようとしている。
それがこのA 45 Sであり、5万570ポンド(730万円)というプライスタグ(オプションを満載した今回の車両価格は5万6570ポンド/817万円だ)を掲げたこのクルマはいま、われわれお気に入りの大きく波打つ荒れた路面のB級路を舞台に追撃を受けている。
このクルマは十分な速さを備えているのだろうか?どんな場面でもという訳ではないが、スーパーカーを打ち負かすだけの能力は備えている。
ではこのクルマは高価だろうか?確かに。
それでも1985年にランチア・デルタS4ストラダーレを手に入れたいと思えば、当時の価格で5万5000ポンド、いまの価値なら16万7000ポンド(2411万円)を支払う必要があったのだから、メガーヌRSトロフィーRのことを常軌を逸しているなどとは言えないだろう。
だが、こうしたデルタやメガーヌとは違い、A 45 Sは奥深きAMGのラインアップでは決してトップに君臨しているモデルというわけではない。
デルタと同じようなボディスタイルを持つこの新型メルセデスにもホモロゲーションの香りを感じるかも知れないが、例えそうだとしても、先代モデルがBTCCに参戦して以来、Aクラスにモータスポーツの実績はなく、レースとは無縁の存在だ。
フォルクスワーゲン・ゴルフRといったモデルのライバルとして登場した3万8000ポンド(549万円)のプライスタグをかかげたA35と比べると、A 45 Sは別のカテゴリーのクルマだと言える。
巨大なウイングと拡大されたトレッド、艶やかで力強いボディに取り付けられた各種ブラケット、そして、ホットハッチ史上最強というべき世界基準のパワートレイン。
さらに、このクルマにはカナードまで装着され、82mmという驚くべき口径の4本出しのマフラーが、オプションのリアウイングとのバランスを取っている。
そして、最高時速315km/hをうたう日産GT-Rにもウイングは装着されている。
ロードテストエディターのマット・ソーンダースは、A 45の購入を考えるひとびとに、悩ましい課題を突き付けるべく、GT-Rとの対決を企画したのだ。
2007年にR35世代のGT-Rが登場した時、日産はバカバカしいほど慎ましやかな価格設定を行うという、忘れがたい大きなミスを犯している。
5万6000ポンドというその価格は、同じようなパフォーマンスや血統を持つライバルたちを何光年も置き去りにするほど安価なものであり、このバーゲンプライスによって、日産が誇るこのゴジラはその偉大なジャイアントキラーとしての名声をさらに高めることとなった。
そして自らの過ちに気付いた日産は、以降徐々にGT-Rの価格を引き上げている。
いまや新車のサーキット向けモデル、ニスモバージョンであればその価格は17万5000ポンド(2527万円)にも達しているのだ。
だが、ほぼ使用歴の無いフェイスリフト後の個体を、新車のA 45 Sとほぼ同じくらいの価格で手に入れることが可能であり、だからこそ今回の対決を思い付いたのだ。
ジャイアントキラーとして、心からハッチバックを欲しいと思うのだろうか? それとも、こんな比較をすること自体間違っているのだろうか?
多くのひとびとがGT-Rの古さを気にするだろう。
最近地元警察がパトカーに採用したこのクルマは、栃木県にある日産の工場で創り出されており、現行GT-Rの設計年次の古さはそのインテリアを見れば一目瞭然だろう。
ランエボの末裔!
一方で、こうした歳月もGT-Rの路上におけるプレゼンスをいささかも弱めてはおらず、パフォーマンスの面でこのクルマに勝るモデルを考え出すのは未だに難しい。
2017年モデルのGT-Rは、その3.8LツインターボV6エンジンから570psのパワーと65.0kg-mのトルクを発揮しており、ボルグワーナー製ツインクラッチ6速ギアボックスと日産のATTESA E-TSを介して路面へと伝達される。
2本の長いプロペラシャフトを持つこのシステムは、明らかにリア偏重のセッティングだが、必要に応じて50対50のトルク配分が可能であり、いくつかの地域においては依然としてジェット燃料を使用したマシンを除く最速の地位を保っている。
よりソフトなサスペンションと遮音性を手に入れた最近のGT-Rはより「GT」に近いモデルと言えるかも知れないが、盛大なロードノイズを発するダンロップ製タイヤを履いていた今回の個体は、依然としてダイレクトな生々しい感触を伝えて来る。
そして、その感触はより新しいメルセデスAMG C63 Sのオーナーたちをも嫉妬させるかも知れないほどだ。
それでも、この個体を販売している世界的に有名なGT-Rのスペシャリスト、リッチフィールドではダンロップ製タイヤをミシュランが誇るパイロットスポーツ4Sに交換することが多いと言う。
一方の明るいサンイエローに塗られたこの小さなA 45 Sは、その強力なエネルギーによって、まさに4つのタイヤを履いた核融合とでも言える存在だ。
コンパクトなボディにわずか2Lの排気量から422psを発揮するハンドビルドのAMG製クローズドデッキエンジンを積んで、四輪駆動システムを備えたこのクルマは、かつての三菱ランサー・エボリューションの末裔とも言うべき存在だ。
互角の速さ!
だが、このクルマの四輪駆動システムはフルタイムでもなければ、そのギアボックスはマニュアルでもない。
その代わりに積むのが8速デュアルクラッチオートマティックであり、左右どちらにも必要に応じて伝達可能なトルク(つまり、エンジンが発揮しているトルクの最大50%だ)を流すことの出来るふたつのクラッチをリアアクスルに備えている。
さらに、エンジンは横置きであり、排気ポートとツインスクロールターボがドライバー側に、吸気がフロント側に配置されている。
その結果、レスポンスの向上に繋がる吸気パイプの短縮化に成功しており、さらにパワーで劣るA35が積む量産型M260エンジンで見られたような反応の遅れはこのクルマには存在しない。
ソーンダースの言葉を借りれば、公道における2地点間の移動において、このAMG製ホットハッチがGT-Rと互角の驚くべき速さを持っていることは明らかだ。
例えGT-Rの大柄で均整のとれたボディや、完全にドライな路面状況といったものが違いをもたらしたとしても、それはほんの僅かなものでしかない。
そして、この2台の違いを理解するのに、それほどのスピードも必要無いのだ。
何よりも驚かされたのは、A 45 Sの最大の武器が、その職人技を感じさせる力強いエンジンではないということであり、これほどの強烈なパワープラントと、妥協なく締め上げられたシャシーの組み合わせは、とても日常生活をともにすることなど出来ないだろうと思っていた。
驚異的なレベル!だが、そうではなかった。
このクルマのボディコントロールと高速でのしなやかさは驚異的なレベルに達しており、さらに比較的ソフトな低速での乗り心地は、先代A45では味わうことが出来なかったものだ。
GT-Rのボディサイズが路面との一体感を損なうような場面でも、A45は次に何が起こるかを手に取るように伝えてくるのであり、それはもはやこれ以上は必要ないと言うほどだった。
そして、それはどんなコーナーでも、どんなスピードでも変わらない。
ターンインしている時でさえ、このクルマのドライバーはディフェレンシャルが見事にトルクを配分している様子を感じることが出来る。
どっしりとしたリアが旋回を始めても、A45 Sが求めるのは完全にニュートラルなハンドリングであり、リアをわずかにスライドさせながら前進を続けるのだ。
決して大げさなほどのオーバーステアは感じさせないが、アンダーステアなわけでもない。
ドアが2枚増えているにもかかわらず、200kgほど軽量なこのクルマは敏捷性でGT-Rを上回っている。
速度感応型ステアリングは一定した反応を返してはくれず、荒れた路面ではやや過敏な様子を見せるものの、AMGらしい重みと感触を備えている。
対照的にGT-Rは多くの点で恐怖を感じさせ、まずは、このクルマのゴツゴツとしたフィールと、穏やかなターボエンジンのサウンド、さらにはデリケートながらも急激な加速を見せるアクセルレスポンスといったものに慣れる必要がある。
メルセデスAMG A 45 Sの新車 vs 日産GT-Rの中古車!どちらを選ぶべき?
Reviewed by RichKid
on
3月 14, 2020
Rating:
0 件のコメント: